キャラット・重さ

アイデアル・カットを磨いている所にさえ求める結婚指輪のダイヤモンドはなかったのだから、一般のダイヤモンドの中になど、さらに求める物があるわけはなかった。その一般のダイヤモンドを長い間にわたって磨いていた人に、研磨にあたってのいろいろな常識を聞いて、改めて「そりゃある訳はない。磨ける訳はない」と思った。いや、磨けないのではなく、まずはカッター会社に、「完壁に磨かない事情」があったのだ。

「歩留まり」、つまり経済性である。美しさをビジネスの源にしているのだから、美しく輝くように磨くのは当たり前だと思うが、そう思うことこそ素人、事実は本当に美しく磨くのではなく、ビジネスになるように磨くこと、ビジネスにすることこそが優先順位の第一であったのである。そのビジネスの最も切実なポイントがキャラット。結婚指輪のダイヤモンドの最も大きな価格の要素は、色やキズなんかではなく、「キャラット・重さ」なのである。

第一の基準が重さだから、できるだけ原石からの削り取る部分を少なくしたほうが重くなる。どの部分に余分の重さがついていても、たとえそれが輝きに関係ない重さでも、それは立派な価格の第一基準になる。従っていかにキャラット数の多くなるダイヤモンドを磨くかが、カッターの腕なのだという。それが世界中のカッティング工場の経営方針でもあった。ラウンド・ブリリアント・カットの持つ五八の面をつけて、なおかつできるだけ重くなるように磨く。すなわち歩留まりとは、磨き上がる石よりも当然大きく重い原石から、いかに削り取る量を少なくして磨き上げるかを表現する時に使う専門用語である。歩留まりがいい、とは五八の面をつけて磨いた上で、より重く磨けた状態であり、反対に歩留まりが悪い、とは原石から比較して、削り取った量が多くてより小さく磨き上がった状態をいうのである。