ダイヤの五八の面

結婚指輪のダイヤモンドを磨くのに五八の面を一面一面磨くたびに、その出来不出来をチェックできればいいのだが、それをやってしまうと、結婚指輪のダイヤモンドを留めているトングには、完全に元のように寸分の狂いもなくセットし直すことはできない。一度セットしたものは、あくまでも磨き終わるまで外せないのだ。やればやるほど最初にできたものよりも微妙に悪くなっているのである。完壁な光の屈折の結果現れるエイトスターは、出れば五本だったり七本だったり、消えては出て、次には出てもよれていたり、きれいな矢印の形にならないのだった。これはすべて、ダイヤモンドの持つ屈折率と光の抵抗である。そして、それらの微妙なズレを、なんとも冷酷に正確にファイヤー・スコープは映し出すのだ。五八の面は完壁に相互関係を持っていたのだ。どうやら五八の面がすべて完壁につけられない限り、求める結婚指輪のダイヤモンドにはならないのである。「ダイヤモンドの数だけ、カットの種類がある」「二つと同じカットは、ありません。だから、ダイヤモンドは神秘的なのです」とかいうのも本当です。